武術でなぜ体幹部を捻らないのか
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太極拳では胴体をひねらない。
背筋をまっすぐに保ったまま(中正という)その形を下肢で運んでいくという形になる。
これは日本の「ナンバ」に似ている。
ナンバも胴体をねじらない動きが基本で、歩くときも右足を出すときに右肩が前に出るような動き方になる。
「技アリの身体になる」と言う本を読むと、古武術研究家の甲野善紀(こうの・よしのり)さんは「股関節・肩関節・四点不動」と言う風にナンバの動作を説明されていたようだ。
右の股関節の上に右の肩関節を置き、左の股関節の上に左の肩関節を置く。
この四つの点を結んだ長方形が決してねじれないように身体を動かすんだとか。
(※平行四辺形になっても良い)なぜこういう動きがいいかというと、ヘソのところで体幹部分をねじるような動きは呼吸を乱すからだ。
たとえば空になったペットボトルをグシャッとひねると、中の空気が外に押し出される。
あれと同じで、体幹部をひねると腹の中のスペースが小さくなって、どうしても息を吐かないといけなくなって、十分に息が出来なくなるのだ。
息は吐きすぎても吸いすぎても命に関わる
太極拳や古武術では、体幹部を捻らない。
捻らないで下肢の動きで身体を運ぶ。
これは身体をねじると、呼吸がどうしても乱れるからである。
身体をねじる動きが続くと、十分に肺に空気が入ってこなくなり、すぐに疲れてしまう。
なぜ疲れるかというと、脳が危険信号を発し、身体を動けなくしてしまうからである。
呼吸が乱れると、体の中では様々なことが起こる。
たとえば息が十分に吐けないと、アシドーシスが起こる。
アシドーシスというのは、血液のPHが酸性方向に傾くと言うことである。
血液はPH7.4で微アルカリ性に保たれているのだが、息を十分に吐けないと二酸化炭素がたまったままになって血液がph7.3とか7.2に酸性化するというわけだ。
そして逆に過呼吸などで息を吐きすぎると、今度はアルカローシスという状態になる。
これは息を吐きすぎて肺の中の二酸化炭素が少なくなり、血液のPHがアルカリ性側に傾くと言うことである。
アシドーシスもアルカローシスも命に関わる状態であるから胴体を捻らずに呼吸を保つと言うことは重要なのだ。
逆に言うと、太極拳や古武術のような、胴体を捻らない動きを身につけると、呼吸を安定させることが出来て、呼吸が深くなる。
そして呼吸が安定化すると心も落ち着くから、健康に良いというわけだ。